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お笑い芸人からの転職「芸人ネクスト」 転職の事例 「おもしろいこと」は会社でもできる。まっすぐ過ぎた22歳の元芸人が、保険会社に採用されたワケとは?
2019.10.30
「会社ってパソコンを打つところ、くらいのイメージしかなかったんです」と話すのは、『芸人ネクスト』を利用して元芸人からの就職を果たした篠原和貴さん。
2019年3月に大手旅行会社HISのグループ会社であるエイチ・エス損害保険株式会社に広報担当として入社し、現在は動画の企画・制作や、社内からの頼まれごとで大忙しの日々。
篠原さんはどのようにして新たなステージにたどり着いたのか? そしてエイチ・エス損保はなぜ、元芸人の篠原さんを採用したのか? 人事の澤井英憲さんと篠原さんにお話を伺いました。
<篠原和貴さん プロフィール>
高校卒業後、東京アナウンス学院芸能バラエティ科お笑いコースに進学し、合計 100 本以上の舞台での MC やラジオのパーソナリティを務める。卒業後2年間フリーの芸人として、動画投稿やスポーツ大会の実況などを行い、2019年3月にエイチ・エス損害保険株式会社に入社。
コンビ解散後、迷走した2年間。「芸人を辞めるきっかけがなかった」
ーー篠原さんは、いつ頃から芸人になりたいと思い始めたのですか?
篠原さん:かなり小さいころからですね。幼稚園生のときにはすでに「ほかの人とは違うことをして目立ちたい」と思っていました。
小学校では放送委員になって、「しの子ちゃん」というDJのキャラクターになりきって校内放送をしたり。中学や高校でも文化祭で漫才をしたり、修学旅行では大喜利大会に出たり。勉強は苦手でしたが、人前で楽しいことをするのが大好きだったんです。
高三になり進路を決めるときには、ずっとやりたかった芸人の道を目指そうと思い、2年間芸人の勉強ができる東京アナウンス学院に進学しました。
ーーお笑いの専門学校ではどのように過ごしたのですか?
篠原さん:中学時代からの友達と「生物同好会」というコンビを組んで活動していました。自分で言うのも難ですが、学内では結構ウケていて。卒業するときには所属する事務所も決まっていたんです。ところが直前になって「やっぱりプロの芸人としてやっていく自信がない」と相方に言われ、やむなく解散しました。
それからはピンでやったり、ペアを組み替えたりしてみたのですが、手応えはなく…。「コンビの方が向いているな」と思う一方で、「中高時代をともに過ごした彼以上の相方はいない」ということもはっきりわかりました。彼こそがベストな相方であり、僕のMAXは彼と組んだときなんだと気づいたんです。
それでも、卒業後の2年間はもがいていました。いろんな事務所にネタ見せに行ったり、お金を払ってライブに出たり、動画を投稿したり。お笑いと関係のない歌のライブや、俳優系のオーディションにも出ました。とにかく迷走していましたね。
ーーいろいろな分野にチャレンジし続けていたのですね。
篠原さん:そうですね。でも、辞めるきっかけがなかったというのも事実です。自分ではなかなか芸人としての区切りをつけられなくて。
芸人としての先は見えない。でも、やめた後のビジョンも見えない。だらだらとバイトをしながら、はっきりしない時間を過ごしていました。
会社=パソコンを打つところ? 働くイメージを掴み、就職を決意
ーー就職を考えたきっかけは何だったのでしょうか?
篠原さん:ずっと実家暮らしだったのですが、彼女ができて同棲することになり、安定した収入を得るために就職を考え始めました。結局その彼女とは別れてしまったのですが(笑)、芸人を辞めるいいきっかけになりましたね。
ーーなぜ『芸人ネクスト』を利用したいと考えたのでしょうか?
篠原さん:大手の人材会社が芸人向けの就職説明会を開いていることを、たまたまTwitterで知ったんです。その説明会はすでに終わっていたのですが、「自分みたいな者でも、就職できる可能性があるんだ」と知り、同じような切り口の就職支援サービスがないかネットで調べたところ、『芸人ネクスト』を見つけました。
ーー『芸人ネクスト』を利用することに不安はありませんでしたか?
篠原さん:ありました(笑)。でも、もしちょっと変な会社だったとしてもネタにできるかなと思って(笑)、思い切って問い合わせてみました。
ところがお会いしてすぐに、中北さんはしっかりした人で、株式会社俺もちゃんとした会社だということがわかりました。
ーー問い合わせた時点で、就職する気持ちは100%固まっていたのですか?
篠原さん:正直まだ迷っていました。当時の僕は、そもそも会社って何をするところなのか全然わかっていなかったんです。「パソコンを打つところ?」くらいのレベルで(笑)。
でも中北さんはそんな僕に、「この会社はこういう事業で、こんな取り組みをしていて、篠原くんが入社したらこういう仕事をすることになる」ということを会社ごとに細かく教えてくれました。そのおかげで、初めて働く具体的なイメージを持つことができたんです。
あと僕は、今まで「面白いことや楽しいことがやりたい=芸人になりたい」という風に、考え方があまりにも単調でした。まっすぐすぎて、芸人になる以外の選択肢を知らなかったんです。それが中北さんと話す中で、「面白いことや楽しいことは、会社でもできるかもしれない」と思うようになりました。
そこで、「自分からアイディアを出すことができて、それを通してくれる文化のある会社なら楽しんで働けるのでは?」と思い、いくつか面接を受けることにしました。
ーー面接を受けてみて、どうでしたか?
篠原さん:最初は全然ダメでした。中北さんと面接の練習をしていたのに、緊張していたのか、本番では全然違うことを言ってしまって…。「芸人としてやっていけそうにないので、仕方なく会社に入ることにした」というようなことをポロッと言ってしまったんです。
中北:そりゃ落ちますよね(笑)。篠原君は今はマイルドな雰囲気だけど、最初はちょっとプライドが高い印象があったんです。だから、面接の方から僕に届くフィードバックも、あえてそのまま本人に伝えていました。
ーーそれは、結構ショックではありませんでしたか…?
篠原さん:そうですね。最初からうまくいくわけはないと思っていましたが、少し落ち込むこともありました。でも中北さんが面接のフィードバックを丁寧にやって下さったおかげで、軌道修正ができて。そこからは面接にかなり通るようになったんです。
芸人時代に培ったスキルも、僕の人柄も、両方必要としてくれた
ーーエイチ・エス損保に入社を決めた理由は何だったのでしょうか?
篠原さん:自分のできることと、会社の求めていることが合致すると思ったからです。
エイチ・エス損保は、動画広告や研修の動画化を検討していました。一方僕は、芸人時代にYoutubeをしていたので動画の編集ができましたし、再生回数を伸ばすために試行錯誤した経験があるので、そのノウハウもありました。
あと、エイチ・エス損保は「保険会社の堅苦しいイメージを打破したい。もっと面白い保険会社にしたい」という方向を持っていたので、求めている人の雰囲気という点でも合うと思いました。
ーー実際に入社して約半年が経ちましたが、いかがですか?
篠原さん:実は僕、今“ひとり部署”なんです。僕が入社するタイミングで広報部門が新設されて、そこに1人で配属されたので。
ーーえっ、それは…少し寂しくはないですか?
篠原さん:そんなことないですよ。動画や画像を扱うスキルを持つ人が社内にあまりいないので、制作系の仕事で他の部署と連携を取っています。画像を作りたいと言われたらフォトショップを開いて加工したり、動画を作りたいと言われたらプレミアというソフトを開いて編集したり、Webサイトを変えたいと言われたらドリームウィーバーとかWinscpを開いて作業をしたり。社内のさまざまな部署から依頼を受けています。
ただ、「本来の業務を見失わないようにね」とは部長にも言われていて。それが今の課題です。頼まれごとの間を縫って広報のTwitterを更新したり、動画の企画を考えたりするようになってしまっているのが現状なので、それを逆にしないといけないと思っています。
ーー今の状況、忙しくてちょっと嫌だなと思うことはなかったですか?
篠原さん:入社する前から動画の編集周りのことをやるんだろうなと思っていて。入社前のイメージと現実に違いがなかったので、受け入れられないと思ったことはないですね。
中北:入社前後でギャップが無かったことがよかったですね。職場の方も篠原君を受け入れる体制を作ってくれたんだと思います。
ーー入社半年で社内のいろんな方から頼りにされているなんて素晴らしいですね。人事の澤井さんにお伺いします。篠原さんの働きぶりはいかがですか?
澤井さん:なんでもできちゃうので、本当に助かっています。これまでうちの会社にはなかったノウハウを持っていますし、わからないことも自分でどんどん勉強して習得してくれるんですよ。
研修用の動画を作ったときには、編集だけでなく出演もしてくれました。今よりもう少しちゃんとした格好でね(笑)
ーー御社の業種は保険会社ですが、篠原さんの自由な雰囲気は問題なかったのでしょうか?
澤井さん:全く問題なかったですね。特に服装についてはできるだけ注意したくないんです。今少し言いましたけど(笑)。
こんなことを言うのは失礼かもしれませんが、もし今の「彼らしさ」がなくなってしまうと、彼は自分の仕事ができなくなってしまうんじゃないかと。篠原さんがちゃんとした格好で会社に来るようになったら、普通のサラリーマンになってしまうような気がするんですよ。
むしろ、篠原さんには自分らしさを忘れないでほしいと思っています。
まぁ、もし「もっと保険会社の社員らしくしてよ」と言っても、できないよね?笑
篠原さん:そんなことないですよ(笑)
中北:なかなかここまでフィットする組み合わせも珍しいですね。個性あふれる篠原さんと、個性を求めていたエイチ・エス損保さん。本当に素晴らしいと思います。篠原君、よかったな!
篠原さん:ありがとうございます! 周りの方が自分を評価してくださっているのをひしひしと感じるので、期待に応えられえるように頑張ります。
ーー澤井さん、篠原さん、お忙しい中ありがとうございました!
(取材、文、写真・一本麻衣)